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ビデオレンタルショップの黄昏を思う

おじさんたちは、こうやって動画を見ていた

20年前、自宅で映画を見たければ、レンタルショップにビデオを借りに行っていました。

レンタルショップは駅前にあって、仕事帰りのサラリーマンや学生が店内でケースを手に取っていたのを覚えています。

ビデオは旧作で1週間200円~300円、新作は1泊350円程度でした。

仕入れているビデオの本数には限りがあるので、「レンタル中」のタグがかかっていたら借りることができません。

「あの映画見たいんだけど、レンタルできなくて」という会話も、友人たちとの雑談の中でよくしたような気がします。

お金が無いときは新作なんて借りれません。

新作借りるなら、旧作にプラスして、お菓子を買って帰ります。

もし、どうしても見たい映画があって、新作を借りたりしたら大ごとでした。

なにしろ、翌日には返さないといけません。

外部との連絡はシャットアウトして2時間を大切に楽しみました。

新作は旧作と違ってノイズも無いので、快適に観ることができました。

過去のドラマを全話まとめてレンタルなんてしたら大変です。

全部は鞄に入らないので、ビデオでパンパンの青い袋を小脇に抱えて帰りました。

「アダルトじゃないです。ドラマです。」

道行く人に対して謎の断りを心の中で呟きながら。

魔のトラップ、延滞料金

レンタルショップには延滞料金というトラップがありました。

え?別にトラップじゃないだろって?

いやいや、動画配信サービス花盛りの現代からしたらトラップですよ。

延滞料金というのは、その名の通り、期日を過ぎたら発生する金額のことです。

店舗によって異なりますが、1日遅れて旧作の1週間分くらいは取られた記憶があります。

1日遅れてです。

1週間ではありません。

もし、「明日見よう」を繰り返して放置しておくと、3日分の延滞料金が発生したなんてこともありました。

学生のうちは時間もあるし、お金にも厳しかったので延滞なんてしたことなかったんですが、新卒で入った広告会社がまあ忙しくて、本当に何日も家に帰れなかったんで(今ならブラック企業だって大騒ぎになりますね)、1週間延滞したこともありました。

延滞料金に2,000円とか払うと「もう2度とレンタルビデオなんて借りるもんか!」と思ってましたが、1週間もしたらまた借りに行っちゃうんです。

だって、それしか動画を見る手段が無いもんですから。

学生時代、レンタルショップでバイトしてた時に延滞料金で1万円払う人がいて、「いやもう買えや!」と心で突っ込んでましたけど、自分がそうなるとは。

斜陽産業となるレンタルショップ業界

そんな動画コンテンツの入り口を全て押さえているかに見えたレンタルショップが、動画配信サービスに取って代わられるとは夢にも思いませんでした。

Netflixの創業者であるリード・ヘイスティングスは、ビデオテープをレンタルした際、返却が期日に間に合わず、延滞料金を40ドル取られた経験から、オンラインのDVDレンタルサービスを思いついたそうです。

新しいサービスを生む人は既存のサービスに「これはおかしいんじゃないか」という疑問を持つ人なんでしょう。

2010年代も半ばになると、NetflixやHuluをはじめとした、幾つかの動画配信サービスが雨後の竹の子のように乱立していきました。

インターネット広告の会社に転職した私にも、当然そうしたサービスは耳に入ってきましたし、会社で話題にあがる映画やドラマはそういった動画配信サービスのものが多くなっていきました。

動画配信サービスに、延滞料金はありません。

動画配信サービスでは、他の人が返却するまで待つ必要はありません。

動画配信サービスには、店舗は無いので行く必要は無いですし、荷物を持ち帰る必要はありません。

レンタルショップに足を運ぶことも無くなっていきました。

レンタルショップは次第に廃れていきます。

動画配信サービスの取り組んだ2つのこと

動画配信サービスは便利です。

ですが彼らは、全く違う2つの点で取り組みを行いました。

サブスクリプション方式の導入

レンタルショップ全盛のころ、月に映画って何本見てたでしょう?

せいぜい1~2本、見ない月が何か月も続くことも珍しくなかったんじゃないでしょうか。

いわゆる、サブスクリプション方式(月額課金でコンテンツ見放題等のサービス)に加入させることで、企業は何もしていないユーザーからも毎月お金を徴収できるようになっています。

これは革命的な収益構造です。

何故なら、これによって企業は毎月安定した収益を得ることができるからです。

動画配信サービス各社は従来のレンタルショップと比べ物にならないくらい安定した収益基盤を手に入れることに成功しました。

オリジナルコンテンツの制作

Amazon Prime Videoで配信されている「HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル」やNetflixの「全裸監督」、Huluの「ミス・シャーロック」など、動画配信サービス各社はオリジナルコンテンツの制作を精力的に行っています。

日本のレンタルショップは仲介業者で、自分たちでコンテンツは作っていませんでした。

良くも悪くも日本国内ではコンテンツ制作会社(映画会社やテレビ局)とレンタルショップは耕す畑が違っていました。

自分たちでヒットコンテンツを生み出せるようになったことで、動画配信サービス各社は仲介業者の立場から脱し、コンテンツ配信の主導権を握れるようになっていきます。

もっと言うと、彼らがヒットコンテンツを生み出せるのは、サブスクリプション方式で得た潤沢な資金があるからというのは否定できないでしょう。

潤沢な資金が良質のコンテンツを生む

我が国のテレビを考えてみます。

テレビはオワコンだって言われています。

それこそ十数年言われています。

でも、テレビ局は視聴者からお金をとってないですからね。

お金が無いんです。

バブルの頃なら広告費がジャブジャブ入ってきたでしょうから、お金をかけて番組を作れました。

今、テレビで一番クオリティの高い番組を作れるのはNHKだと思います。

毎月各家庭から決まったお金を徴収していて、一番お金持ってますからね。

大河ドラマのお金のかけ方は凄いですよ。

逆に言うと、今の状況で面白いテレビ番組を作っている民放各局は、制作陣と出演者の高い能力とプロ意識が結集されているとも言えます。

良いものを作るにはカネがかかる。

サービスを維持するにはカネがかかる。

これがクリエイティブの原則でしょう。

TBSテレビを含むTBSホールディングスの今期の業績は営業利益の9割を不動産による利益が占めていることが分かりました。

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色々言っている人も多いみたいですが、利益を出せる事業を抱えているだけ、TBSは良いと言えるでしょう。

そこで得た資金をもとに、良質な番組を作れるならそれで良いと思うのです。

あらためてレンタルショップの黄昏を思う

レンタルショップの黄昏を思いながら、今の動画配信サービスの隆盛を見て、こんなことをしみじみ考えていました。

彼らの勝敗を分けたのは、作り手に回ろうとした姿勢と、潤沢な資金の確保だったのではないかと。

時代の移り変わりは本当に早いけれど、この流れは変わらないのではないかと感じています。

レンタルショップと動画配信サービスの戦いは、良いことを教えてくれたと思います。

これから色んな業界を、この視点で見守ってみようと思いました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。